ムハンマドちゃん

お寿司がすきです

魔法少女アイドル

 

私はアイドルが好きだ。女の子のアイドル。モー娘や乃木坂もいいけれど、私が一番好きなのはライブハウスでライブをするような、いわゆる地下アイドル。

 

どうしてこんなにアイドルが好きなのかな。自分でも何度も考えたことがあるけれど、よくわからない。自分がアイドルになりたいわけじゃないし、実は女の子が好きとかそういうのでもない。ただひたすら、アイドルとして頑張っている女の子と、アイドルになりたくて必死に頑張っている女の子が好きなのだ。

 

私がアイドルの曲を初めて好きになったのは中学三年生くらいの頃、きっかけも覚えていないほど何でもないきっかけで「BiS」というアイドルに出会った。そして、そのアイドルらしからぬバンドサウンドに衝撃を受けた。AKB48しかアイドルを知らなかった私にとってのアイドルのイメージ、いわゆる一般的なアイドルフェイスではなかったのだけれど、それでも曲とパフォーマンスがかっこよくて、どんどん引き込まれてしまった。

BiSが解散するとその後継的な立ち位置で、今や知名度うなぎ上りのBiSHが結成され、かと思えば全く新しいメンバーでBiSが再結成され、耳が忙しいなあと思いつつ、アイドルの曲と一緒に大学受験し、大学に入学した。(受験本番の直前までBiSHの『OTNK』を聴いて気合を入れていたので、感慨深い一曲ではあるが、OTNKで気合を入れるJKってそもそもなんだか気持ち悪い)

そうして、それからさらに色々なアイドルグループに出会い、色々な女の子に出会った。対バンでお目当てではなかったはずのアイドルグループのライブにも感動してファンになってしまったり、とにかく私はチョロい。

 

そんな話はどうでも良い。私が一番好きな女の子、いわゆる「推し」は、現在「CARRY LOOSE」というグループで活動しているパン・ルナリーフィという子。(日本人?と訊かれるが日本人です。以下、いつものようにパンちゃんと呼びます)彼女は良い意味でわたしをアイドル・オタクにさせてくれた。一目惚れだった。彼女を見たときから、もう顔も歌声もドストライクで、こんな子この世に存在するんだ、尊い、間近で見てみたい、お話ししてみたい、、、という今まで経験したことのない胸のトゥンクが抑えきれなくなってしまった。そして当時オタク友達など居なかった私はパンちゃんに会うべく、たった一人で、システムもよくわからないまま初めてチェキ会というものへ出向き、結局緊張で何も話せないままチェキを撮った。今となっては良い思い出だが、それからも足繁くパンちゃんのチェキ会、そして他のグループの好きなメンバーのチェキ会へも行くようになった。

「"好き"という感情を持ったままの行動は記憶に残りにくい」と何かで見たことがあるけれど、本当にその通りで、今まで何十回とパンちゃんとチェキを撮ったはずなのに記憶が全くない。他の子と撮ったチェキは「あ〜この時はこんな話をしたな〜」とかなんとなく覚えているのだけど、パンちゃんとの思い出だけ皆無なのだ。何十回も通っているのにどうせ毎回「アッ今日も可愛いね!アッ…すごい好き…」みたいな事しか言えない。キモいし、悲しい。

 

何かしらのオタクである人には理解してもらえると思うのだけど、推しっていうのはそれほど自分にとって凄いもので、好きという感情とも違うし大好きだけどそれでも足りないし、大好き好き好き可愛い好き好き大好き尊い可愛い前世での徳の積みようが凄い、いやこれでもまだ足りないし、とにかく言葉で表せないほどしゅきしゅきしゅきしゅきしゅきって感じなのだ。

推しの私服のブランドや使っている化粧品はほぼ確実に真似して買ってしまう。自分が幾ら着飾ったところでパンちゃんにはなれないのだけど。

 

そんな神のような存在であるパンちゃんであるが、彼女も三年前までは一般人の、普通の女の子だったのだ。

勿論パンちゃんはお披露目の時から可愛かった。しかし、その可愛さは贔屓目なしに年々進化していて、歌唱力もグングン上がり、今や事務所内でもかなりの人気を誇っている。

アイドルって魔法で、普通の女の子が、アイドルになって人前で歌って踊っているうちに、最初の頃とは別人のように可愛く、そしてかっこよくなるのだ。勿論それは彼女達の努力によるものなのだけれど、日を増すごとに努力だけでは掴み取れないような何か、まさに魔法のようなものが彼女達にかかっているように見えて仕方ないのだ。私はその魔法がかかったのが見えたとき、泣いてしまう。だからデビューの時から出会った女の子達、全員に対して何度も何度もこれでもかという程、今まで泣いてしまった。

 

アイドルになりたい女の子が揃って「自分を変えたい」って言うのも、その魔法のようなものがあるっていうのにみんな気付いているからなのかな、とも思う。

 

元はみんな普通の女の子だ。私なんか何の目標もなく、将来の話をするのも恥ずかしく、普通の女の子でいいやって妥協して適当に生きている。それなのに、私と同年代、あるいは何個も年下の女の子が、ただひたすらアイドルになりたくて必死にがむしゃらにもがいて頑張っている姿が、そしてその思いが将来の話を避けがちな私の胸にグサッと刺さって、また泣けてしまう。

 

 

そうして、私達は普通の女の子がアイドルになってステージの上で歌って踊る姿に熱狂する。かっこよくてドキッとしたり、感動して泣いたりする。逆に言えば、私達は彼女達のアイドルとしての一面しか知らない。考えてみれば、本名も知らないし、年齢も、どの寿司ネタが好きなのかも、本当はどんな顔をしてアイドルらしいSNSを更新しているのかも知らない。赤の他人だから当然だ。けれども、我々オタクはアイドルの皮を被った赤の他人の写真を見て癒されたり、アイドルの皮を被った女の子と数秒話してチェキを撮るためだけにCDを何十枚も買ったりするのだ。私達は普通の女の子の、アイドルとしての側面だけしか見ていない、というか見ることができない。全部知りたい?でもよく考えてみて。知らない方が幸せなのかもしれない。アイドルの魔法に私達もつられてかかったまま、夢を見ていた方が、幸せなのかもしれないよ。そう考えると、少し切ない気もするナ